Flex と Bison を同時に使う


Flex と Bison を併用する場合には、 Flex のソースファイル(mylexer.l)には次のような #include 文を入れておきます。 インクルードされるファイル(myparser.h)は Bison が生成するファイルで、 NUMBEREOL などの Flex で使用する終端記号を表すマクロの定義が書かれています。


%{
void yyerror(char*);

#define YY_SKIP_YYWRAP
int yywrap(void) { return 1; }
#include "myparser.h" /* myparser.hは bisonが生成するファイル */
%}
%%
[ \t]+                            { /* ここでは何もしない */ }
[0-9]+(\.[0-9]+)?(E[+\-]?[0-9]+)? { 
  /* NUMBERという終端記号の種類を返す。その値(“属性”)は
  yylvalという大域変数に代入する。 */
                                    sscanf(yytext, "%lf", &yylval); return NUMBER;
                                  }
[+\-\*\/\(\)]                     { 
  /* + - * / ( )の場合は、マッチした文字をそのまま返す。*/
  /* マッチした文字は一般に yytext[0] 〜 yytext[yyleng-1]。*/
                                    return yytext[0]; 
                                  }   
"\n"                              { return EOL; }
.                                 { yyerror("不正な文字です。"); return EOL; } 
%%
/* なにもなし */

動作の中に return 文を入れておくと、 その式の値が Flex の生成する yylex 関数の戻り値になります。 yylex 関数は呼び出されるたびに、次のトークンの情報を返します。

終端記号の “種類”(NUMBER, EOL など)を yylex 関数の値として返し、値(“属性”)を yylval という大域変数に代入していることに注意します。 これが通常の yylex 関数の書き方です。

一般に正規表現にマッチした文字は、 yytext という配列に保持されています。また yyleng という変数にマッチした文字の数が保持されています。 だからマッチした文字は一般に yytext[0]yytext[yyleng-1] ということになります。(通常のC言語の文字列とは異なり、 最後(yytext[yyleng])にヌル文字 '\0' は入っていないので注意が必要です。)

Bison のソースファイル (myparser.y)の方は、 単独で使う場合とあまり変わりませんが、 yylex 関数は Flex の方で用意するのでプロトタイプ宣言だけしておきます。


%{
#define YYSTYPE double  /* トークンの属性の型を宣言 */
#include <stdio.h>
#include <stdlib.h> /* exit関数を使うため */

void yyerror(char* s) {
   printf("%s\n", s);
}

int yylex(void); /* yylexのプロトタイプ宣言 */
%}

%token NUMBER 
%token EOL
%left '+' '-'
%left '*' '/'
%%
input :   /* 空 */
      | input line    {}
      ;
line  :  EOL           { exit (0); } /* 空行だったら終了 */
      |  expr EOL      { printf ("\t%g\n", $1); }
      ;
expr  :  NUMBER        { $$ = $1; }
      |  expr '+' expr { $$ = $1 + $3; }
      |  expr '-' expr { $$ = $1 - $3; }
      |  expr '*' expr { $$ = $1 * $3; }
      |  expr '/' expr { $$ = $1 / $3; }
      |  '(' expr ')'    $$ = $2; }
      ;
%%
int main(void) {
   printf("Ctrl-cで終了します。\n");
   yyparse();
   return 0;
}

C ソースファイルはそれぞれ次のコマンドで生成します。

  bison -omyparser.c -d myparser.y
  flex -omylexer.c -I mylexer.l

必ず -d オプションをつけて Bisonを実行します。 このとき -o オプションで、 C ファイル名(この場合 myparser.c)を指定しておきます。 すると、拡張子を除いて同じ名前のヘッダーファイル(この場合 myparser.h)も生成されます。 (-o オプションをつけないと、 myparser.tab.cmyparser.tab.h という名前のファイルが生成されます。)

あとはこの 2つの C ソースファイルをまとめてコンパイルします。

  bcc32 -ecalc mylexer.c myparser.c

-e は実行ファイルの名前を指定するオプションです。 これで calc.exe という名前の実行可能ファイルが生成されます。


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