JFlex について


JFlex は正規表現を記述したソースファイルから、 Java 言語の字句解析プログラム(スキャナ)を自動生成するプログラムです。 JFlex のソースファイル(通常 .jflex という拡張子をつける)は、 次のようなものです。

(構文解析系(パーサ)から利用するためのメソッド yylexを生成します。 yylexメソッドは、与えられたファイルを最初から順に読み、 呼ばれるたびに次のトークンをリターンするのが本来の使用法ですが、 この例では標準出力に結果を出力しています。)


例 1

おそらく一番簡単な例 (ファイル中の hello を Bonjour に書き換える。)
/* import 文はここに書く */
import java.io.IOException;

%%

// 生成するクラスの名前
%class Lexer0
// yylex メソッドの戻り値型
%int
%unicode
%line
%column

%{
  /* フィールドやメソッドはここに書く */
    public static void main(String[] args) throws IOException {
        new Lexer0(System.in).yylex();
    }
%}
   /* この例ではここには何も書かない */
%%

   /* ここに動作記述を書く。*/
   /* yytext()はマッチした文字列を返すメソッド */
[hH]ello        { System.out.print("Bonjour"); }
.|\n            { System.out.print(yytext()); } /* その他の文字はそのまま出力 */

例 2

少しだけ複雑な例 (標準入力から文字を読み込み、 連続した空白文字をひとつのアンダースコア(_)に置き換え、 数と識別子のまわりにそれぞれ、 <b>〜</b>, <i>〜</i> というタグを挿入する。)
/* import 文はここに書く */
import java.io.IOException;

%%

// 生成するクラスの名前
%class MyLexer
// yylex メソッドの戻り値型
%int
%unicode
%line
%column

%{
   /* フィールドやメソッドはここに書く */
    public static void main(String[] args) throws IOException {
        new MyLexer(System.in).yylex();
    }
%}
   /* この例ではここには何も書かない */
%%

   /* ここに動作記述を書く。*/
   /* yytext() はマッチした文字列を返すメソッド */
[ \t]+                              { System.out.print('_'); }
[0-9]+(\.[0-9]+)?(E[+\-]?[0-9]+)?   { System.out.print("<b>");
                                      System.out.print(yytext()); 
                                      System.out.print("</b>");   }
[A-Za-z]([A-Za-z0-9])*              { System.out.print("<i>"); 
                                      System.out.print(yytext());
                                      System.out.print("</i>"); }
"."                                 { System.out.print(yytext());
                                      System.exit(1); }          
                                     // その他の文字はそのまま出力
.|\n                                { System.out.printf(yytext()); } 
   /* 上の動作記述では値を返していないが、動作記述の中で
      return 文を書くと、yylex メソッドの戻り値になる。(これが本来の使い方)*/
同じ動作だがよく使う正規表現に名前をつけた例
/* import 宣言はここに書く */
import java.io.IOException;

%%

// 生成するクラスの名前
%class MyLexer1
// yylex メソッドの戻り値型
%int
%unicode
%line
%column

%{
  /* フィールドやメソッドはここに書く */
    public static void main(String[] args) throws IOException {
        new MyLexer1(System.in).yylex();
    }
%}

 /* ここは正規表現の定義(良く使う正規表現に名前をつける) */
delim  = [ \t]
ws     = {delim}+
letter = [A-Za-z]
digit  = [0-9]
ident  = {letter}({letter}|{digit})*
number = {digit}+(\.{digit}+)?(E[+\-]?{digit})?

%%

   /* ここに動作記述を書く。*/
   /* yytext() はマッチした文字列を返すメソッド */
{ws}      { System.out.print('_'); }
{number}  { System.out.print("<b>");
            System.out.print(yytext()); 
            System.out.print("</b>");   }
{ident}   { System.out.print("<i>"); 
            System.out.print(yytext());
            System.out.print("</i>"); }
"."       { System.out.print(yytext());
            System.exit(1); }          
          // その他の文字はそのまま出力
.|\n      { System.out.printf(yytext()); } 
           
   /* 上の動作記述では値を返していないが、動作記述の中で
      return 文を書くと、yylex メソッドの戻り値になる。(これが本来の使い方)*/

jacc(構文解析部生成系)で生成した構文解析部といっしょに動作させる例は、 ここにあります。


説明

JFlex のソース中では次の文字は特別な意味を持ち、 正規表現のために使います。 (教科書や授業で説明した記法と微妙に違う場合があるので注意してください。)

   \ " . [ ] * + ? { } | ( ) - < > ^ % / $

意味
c 上記の特殊文字以外の文字はその文字そのもの a
\c \n, \t などは C 言語と同じ意味、 それ以外の文字 cc そのもの \*
"str" 文字列 str そのもの "**"
. 改行以外の任意の文字 a.*b
[str] 文字列 str 中の任意の文字
注: str は正規表現ではないので、 ], \, -, ^, "以外の文字は特別な意味を持たない。
注: flex では、"[] の中に裸で書いても良いのですが、 JFlex では \" と書かなければいけないようです。
[abc]
[c1-c2] 文字 c1 から文字 c2 の範囲の任意の文字 [a-zA-Z]
[^str] 文字列 str に含まれない任意の文字
注: str は正規表現ではないので、 ], \, -, ^以外の文字は特別な意味を持たない。
注: flex では、"[] の中に裸で書いても良いのですが、 JFlex では \" と書かなければいけないようです。
[^abc]
r* 正規表現 r の 0 回以上の繰り返し a*
r+ 正規表現 r の 1 回以上の繰り返し a+
r? 正規表現 r の 0 回か 1 回の出現 a?
r1r2 正規表現 r1 の後に 正規表現 r2 ab
r1|r2 正規表現 r1 または 正規表現 r2 a|b
{name} name という名前のついた正規表現の定義の展開 {ident}

この他、通常の括弧、()、 がグループ化のために用いられます。 例えば、 (ab|cd)* は、 ab または cd の 0 回以上の繰り返しを表わします。


生成

このようなファイル(MyLexer.jflex とする)から Java ソースファイルを生成するには

  java -jar JFlex.jar MyLexer.jflex

というコマンドを実行します。

これで MyLexer.java という名前の Java ソースファイルが生成されます。
(JFlex ソース中の %class オプションで指定したクラス名の Java ソースファイルが生成されます。)

この Java ソースファイル(MyLexer.java)を コンパイルすると、クラスファイルが生成されます。

  javac MyLexer.java

次のコマンドで実行できます。

  java MyLexer

FAQ (よくある質問)

  1. (例1について) 作成したプログラムを実行したとき、どうやって終了すれば良いですか?

    Ctrl-c または Ctrl-z で終了できます。

  2. (例2について)System.exit(1) って何ですか?

    System.exit はプログラムを終了させるためのメソッドです。 例2では 「.」を入力するとプログラムを終了するようになっています。

  3. (例2について) \.[+\-] ってどういう意味ですか?

    \. はピリオドそのものを表わします。 「.」(ピリオド)は jflex の規則中では特別な意味を持つので、 ピリオドそのものを表わすには \ でエスケープしてやります。 同様に「-」も [] の中では特別な意味を持つので、 エスケープが必要で、 [+\-] は 「+ または -」の意味になります。

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Koji Kagawa